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ベトナムのスタートアップ界隈で気になったことを紹介していきます

3ヶ月間ベトナムで強い営業組織を作るために取り組んだ6つの施策

3ヶ月間ベトナムで強い営業組織を作るために取り組んだ6つの施策をまとめました。 まだまだ試行錯誤しながらなので偉そうなことは言えませんが、ベトナムに限らず東南アジア市場でビジネスを展開する際に参考になればと思います。

人ではなくシステムに投下する

日本で事業立ち上げ期は、一枚岩になるための人の管理が大切です。しかし、ベトナムでそれを求めるのは困難。価値観、言語の違いは拭いきれません。ではどうするのか。誰もが活躍できる"システムを管理する"という方針に変えることです。言い換えれば、指示命令がなくても回る組織システムを作ることです。そのためには、この組織がどこを目指すのか、どのような体験を顧客に届けたいのかという顧客体験(User experience)の定義は不可欠で、メンバーに伝え続けなければなりません。メンバーを単なる作業者としてみている管理者に欠けている視点です。

また、異なる第1言語間では10言って1わかる程度。日本人同士のように、伝える努力やスキルがなくても、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境ではありません。阿吽の呼吸なんてものは存在しません。これは「ハイコンテクスト文化」と「ローコンテクスト文化」の違いとも言えるでしょう。 人ではなくシステムに投下することで、転職率の高いベトナムにおいて、人が替わっても再現性のある組織ができ、結果的にメンバーに目がいくようになりました。

評価基準を変える

これまで通り日本のパターン認識で評価をしがちですが、実は自分の認識が間違っており、新しい評価軸に作り替える必要があることも。 例えば、ベトナム人で面接に来る人は基本的に愛想がありません。もちろん個人の性格の問題もありますが、日本と比べると少ないのが事実でしょう。日本のサービス業をみてみてください。アルバイトスタッフですらとても愛想がよく、愛想が悪い人は仕事が見つけづらい世の中です。

実際に、愛想の悪いベトナム人を面接している時に、初めの数十秒で不採用にしたくなることがありました。しかし、それは私のこれまでの評価パターンに当てはめて考えた結果であり、実は本来の価値を見落としている可能性があったのです。 これは面接に限った話ではなく、開発でも営業でも同じことが言え、多国籍チームを作る際には絶対的に必要な視点でしょう。

相手を想像するコミュニケーション

私たちの組織の使用言語は英語です。ベトナム語が話せないので、英語を話せるスタッフを採用しています。しかし、私の英語力は決して高いものではありません。ボビーオロゴンの日本語能力くらいです。しかし、チームを動かすのにフォーマルな英語なんて必要ありません。重要なのは、相手を想像するコミュニケーションなのです。そして、コミュニケーションの量を下げないことです。

仕事の大部分がチャットでのテキストコミュニケーションで完結もできます。しかし、あえてリアルに話すことも時には重要です。第一言語ではない言語での会話は、どうしてもストレスが伴います。すると、意識をしないと自然とコミュニケーション量は少なくなる方に引っ張られます。中途半端で恥ずかしい英語でも、ガンガンチームを動かす方が大切なのです。

品質とは何かを伝え続ける

オフショア開発などでもよく言われることですが、東南アジアのチームで仕事をする際に問題になりやすいのは品質に対する基準の違いです。例えばソフトウェア開発であれば、ベトナムならば「動けばいいじゃん」となります。日本の会社ならば炎上ものです。この品質に対する認識の違いを埋める作業が必要なのです。

その昔、太平洋戦争時には連合艦隊司令長官を務め、真珠湾攻撃を指揮した人物である山本五十六は「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」という言葉を残しました。品質を上げるためには、品質とは何なのかを定義すること、そして実際にやってみせることが重要です。そして、その植え付けた品質に対する意識を、他の業務においても再現性を持たせることです。

組織のフェーズによってマネジメントスタイルを変える

ベトナム人の特徴として、非常に真面目で勤勉なことが挙げられます。一方で、言われたことはきちんとこなすが、それ以上のことはしない傾向も。依頼した仕事に対して何か新しい提案が返ってくることは少ないのです。しかし、これは改善できる問題です。どのようなチームも、下記のステップを踏んで成長していくからです。

Phase1:受け身

Phase2:自発

Phase3:顧客視点

Phase4:多能工

Phase5:スピードアップ

初めは受け身型の組織から始まり、徐々に自発的になっていきます。つまり、組織のフェーズによってマネジメントスタイルを変える意識を持つべきなのです。そうでなければ、両者にとってストレスなだけなのです。

私たちのチームでは、やっと「受け身」から「自発」の組織に少しずつ変化してきたという状況です。 それまでに取り組んだのは、主に以下の2つです。

・あなたはどう思うのか?と聞き続ける

・理想のレベルを伝え続ける

まず一つ目ですが、とにかくメンバーの声を拾い続けることです。日本人社長がベトナム人スタッフをマネジメントする際によく見受けられるケースが、全て自分で決めて実行段階で下に落とすというスタイルです。ご自身が何でも出来てしまい、その方が早いために取る手段ですが、長期的にみると間違いです。たとえ聞いたところで良いアイデアが得られないとしても、メンバーを巻き込み、”自分ゴト"にすることが大切なのです。

しかし1点注意が必要です。それは、上手な質問の仕方をすることです。漠然としたオープン過ぎる質問では答えることは難しい。それはそのスタッフの能力もありますが、どちらかと言うと社長とメンバーと言うレイヤーの違いにより生まれる取得情報の差です。きちんと判断に必要な情報を日々伝えているのか、伝えていたとしても、それは100%伝わっているのかを振り返ってみましょう。

私たちの場合、「この問題に対して、いまAかBで迷っているのだけど、ベトナムではどちらが今の自分達にとって有効だと思う?」というような限定的な質問の仕方をしています。それにより、考えるべきポイントが整理され、より良いアウトプットが期待できるからです。

さらに言えば、口頭のみで伝えるのではなく、紙やホワイトボードに書きながら伝えます。これは相手を注意する際にも有効です。ベトナム人はどんなに自分が悪くとも自分への責任を回避する性格があり、口頭で注意をしても自己防衛に入り、口論になるだけです。紙に書きながら、なぜ改善すべきなのかを論理的に説明するのです。他の国と比べて個性やこだわりが薄く、冷静に論理的に説明をすれば良い関係性を保ったまま改善をしてくれるのです。

そして2つ目は、理想のレベルを伝え続けることです。例えばWebサービスを運営していれば、競合サイトや他業種のサービスが実装している機能やサービス内容の記事やURL共有し続けるのです。 それにより、プロダクトオーナーが求める理想の姿の認識が揃い、そこに到達するためにもっとこうすべきだというアイデアが生まれる組織になるのです。

リクルートの社訓にもありますが、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という理想的なチームに近づくことができます。

少ない情報での意思決定に耐える

正しい判断をするためには、2つのアプローチがあります。

1つは定量的な判断。サービスを運営し、一定量のデータが蓄積してくればそのデータをもとに判断が可能です。もう1つは定性的な判断。ベトナム市場への深い知見があれば、それなりに正しい判断ができる場合もあるでしょう。新規サービスの場合ユーザーは0ですから、定量的判断ができるまで時間がかかります。また、定性的判断ができるほどの知見も経験も私たちにはありませんでした。

ではどうするのか。とにかくユーザーや顧客にサービスをぶつけ、フィードバックを得ながら学習するしかないのです。例えば営業担当が企業に営業に行きフィードバックを受けてきます。しかしここはベトナム。なかなか濃度の高いフィードバックを吸い上げてくることができません。海外市場でマーケットニーズを掴むことは、国内よりも困難を極めます。ならば時間をかけて調査をするべきなのか。いや、私たちにはそんな時間はありません。モタモタしていると、キャッシュは尽き、競合は同じサービスを開始するでしょう。

このような環境下では、対外的にも対内的にも少ない情報の中で意思決定をしなければならないのです。意思決定には責任が伴います。不確定要素がある中での意思決定はストレスも伴います。それでも意思決定し、前に進むしかないのです。

終わりに

3ヶ月間ベトナムで強い営業組織を作るために取り組んだ6つの施策についてご紹介しました。 ベトナムに少しでも興味を持った方、ベトナム事業をしたい方がいらっしゃれば、お力になれることもあるかと思いますので、ぜひご連絡くださいませ。

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開発現場においてベトナム人エンジニアの力を最大限に引き出す方法(コミュニケーター編)

ラボ開発の導入を既に決めた企業向けのルールブック的な資料です。

今回はコミュニケーター編(テキスト多め)

 

 

人材業界主要4社の東南アジアM&A動向

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人材サービス各社が東南アジアで人材支援事業を相次いで拡大しています。

これまで東南アジアは製造拠点としての色が強かった背景がありますが、徐々に消費市場としても有望視されサービス産業の進出も進んでおり、人材サービスの需要もさらに拡大すると予想されています。なぜ買収という手段を取るかですが、外部環境変化のスピードに合わせ、事業展開を速める必要があるからでしょう。

今回は、日本の人材業界主要4社(テンプ、パソナ、エンジャパン、リクルート)の直近5年の東南アジアでのM&A動向を各社別にご紹介していきます。

 

テンプホールディングス

アジア地域を中心に海外9ヵ国/地域39拠点にて、人材紹介や人材派遣、人事コンサルティングサービスなど幅広い海外事業を提供。 東南アジアの開拓に関しては現地の人材会社を買収する方針で、自社との融合効果が大きい企業を選択。現地の事情に詳しい人材と営業網を一気に増やす狙いがある。買収を通じ、営業などを担当するアジアの従業員を2017年までに現状の2.5倍に当たる1500人に増加させる。

ベトナム

ベトナムの大手人材サービス会社First Alliancesを買収。約10万人の登録者と日系や欧米系の企業を中心に約500社の顧客を持ち、国内最大級規模を誇る、ベトナム最大級のローカル人材会社。人材紹介および人材派遣、ペイロールなどのサービスはもちろん、人事コンサルティングによる戦略的な人事施策の実現まで、高品質かつ包括的なサービスを提供していく。

シンガポール

シンガポールの人材サービス会社、キャピタを買収。創業者らが保有する株式を総額6174万ドル(約74億円)で9月下旬に取得し100%子会社化。現地の子会社であるインテリジェンスアジアと連携し、東南アジアで人材サービス事業のシェアを高める。 キャピタは2007年創業で欧米の企業や現地企業に人材サービスを提供。資本金は約1億9千万円で、14年12月期の売上高は約40億円だった。

 

パソナグループ

パソナグループは現在、中国、シンガポールインドネシアベトナム、インド等で人材サービスを提供しており、その地域は11地域35拠点。買収よりも合弁や出資での進出が多いよう。

インドネシア

インドネシアのデュータグリヤ サラナの株式の49%を取得。ホワイトカラーの人材派遣で同国有数の規模を誇り、金融、ITなどの専門分野に強く、現地の大手企業を顧客としている。人材派遣のほか、 現地のマネジメントや従業員を育成するための教育・研修については、外資参入規制により早期のサービス提供が困難だったことから、DGS社の子会社化が最適な選択肢であると判断したことによるもの。

 

エンジャパン

2011年9月にシンガポールへ進出して以降、「en world」ブランドで人材紹介を開始。各国内での成長だけではなく、海外子会社間の連携を強化することで、中長期的な海外事業の成長を目指す。

ベトナム

ベトナムワークス(ナビゴス・グループ)を約22億円を投じて、同グループの発行済み株式総数の約90%を取得。ベトナムでは求人需要の拡大が見込まれており、買収によって同国市場の開拓を本格化するもようで、アジア展開の強化が前向きに評価されている。

タイ

タイの人材紹介会社キャップストーン・グループ・リクルートメント・アンド・コンサルティングタイランド)の株式約74%を約2億1500万円で取得。キャップストーンは2002年設立。管理職の人材紹介に強みを持ち、2012年12月期売上高は約4800万バーツ(約1億5400万円)、従業員27人。タイは、ASEAN 加盟国においてGDPが2番目の水準(出所:JETRO)。管理職の給与水準は周辺諸国と比べて高く、人材紹介マーケットも成長中。

インド

インドの求人紹介会社 New Era India Consultancy(ニューデリー市)の株式60%を筆頭株主でCEOのArvind Sehgal氏から約5億8,600万円で取得取得。高いGDP成長率と世界2位の人口を保有し、継続的に人材サービスの拡大が見込まれるインド市場に進出。

 

リクルートホールディングス

以前は独資で各国に現地法人を設立、拠点を構えるケースが多かったが、近年は点在する大手人材会社買収で事業規模を拡大する動きが目立っています。各国を「点」で、アジアを「面」でとらえる戦略で、グローバルNo.1の人材総合サービス企業を目指す。

豪州

豪州の人材派遣会社、チャンドラー・マクロード(シドニー)とピープルバンク(ノースシドニー)の2社を買収。東南アジアではありませんが参考までに。

香港

香港子会社RGF社を通じて、アジア圏最大級のエグゼクティブサーチ会社ボーラ・アソシエイツ・グループの株式を追加取得。

インド

インド最大級のエグゼクティブサーチ会社のひとつであるNuGrid Consulting Private Limited (以下、「NC社」)と、同社株式の 100%を取得。買収額は明らかにしていないが数十億円規模とみられる。インドでは経営幹部層の人材需要が高まっており、同国で日系以外の企業への人材紹介事業を強化。

 

 

まとめ

人材業界主要4社の東南アジアM&A動向をご紹介してまいりました。私もベトナムで現地向け人材サービスを運営している中で感じることですが、想像以上に現地のスタッフを活用しながら現地の顧客基盤を築くことに時間がかかることです。スピードが命とも言えるこの領域において買収による進出が多いのも納得できます。

人材サービスは参入がしやすいため、タケノコのように新たなサービスが生まれ、小規模ならば黒字経営がしやすいとも言われています。そんな環境下で圧倒的に抜きん出ることは、参入のしやすさとはまた別次元の問題となるようです。

外国人によるベトナム不動産物件購入の解禁にみる、不動産テックの可能性とは

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いつの時代も、法律の改正による新たなビジネスチャンスが生まれてきました。

最近では電気通信事業法の改正に伴い、多くの事業者によるMVNOへの参入も一例でしょう。 事業家であれば、時代の後押しを受けながら大きく成長できるチャンスと言え、法改正の動きを常に追う癖をつけておくべきです。

さて、ここベトナムにおいても2015年に不動産市場において大きな法改正がありました。 これまでベトナム国内において外国人が不動産を購入する場合、駐在員等の居住者による自己使用に限定されていました。

しかし、2015年7月に住宅法の改正が行われ、外国人による住宅購入条件の緩和が決まりました。外国人および越僑の住宅購入が緩和されることで、不動産市場の活性化につながると期待されています。

住宅法の改正の3つのポイント

1:外国人の不動産投資の条件が緩和

ベトナム改正住宅法」によって外国の企業、組織、外国人のベトナムにおける不動産投資の条件が大幅に緩和されました。具体的には、ベトナムに入国を許可された外国人なら住宅を所有することができ、賃貸も条件付きで可能となります。また、購入できる物件は、新しい住宅建築プロジェクトにおいてのみです。既存の一般住宅では原則的に認められません。

2:所有権の制限が決められた

住宅法改正により、物件によって明確に所有権の制限が規定されました。具体的には、集合住宅、マンション1棟について30%まで、低層マンションであれば10%まで所有することができます。戸建の場合は1つの行政区、町村で250戸まで所有が認められており、賃貸に出すことも可能になりました。所有権の有効期間は50年間ですが、その後、政府に申請することによって所有権の更新が一度だけ可能になりさらに50年更新することができます。

3:マンションでの飲食店運営が許可された

住宅法改正によって分譲マンションでのレストランやバーなどの飲食店、カラオケの運営が認められました。

しかし2つ条件があります。それは、建物に付随する営業用のスペースで運営すること、断熱・防音ユニットを取り入れることです。営業用のスペースでは、火災や爆発を起こしやすい事業や、環境汚染につながるあらゆる事業を禁止しています。

住宅法改正によって、ベトナム不動産市場が一定の制限はあるものの、大幅に開放されました。ホーチミンハノイでは、地下鉄や鉄道などのインフラ建設や住宅、商業施設開発案件が目白押しとなっている今、ベトナムでの不動産投資を検討してみることをオススメします。

安く購入し、高い利回りが期待できる

先にお伝えした通り、ベトナムでは今まで外国人が不動産を購入できなかったため、その不動産マーケットは自国民により形成されています。ベトナムは急速に富裕層が拡大しているとはいえ、1人当たりGDPが2000米ドル(日本の約20分の1)の国であり、不動産価格は極めて低い水準です。 現在販売中の日系企業の高層コンドミニアムは、50㎡で約1000万円であり、これを同等の物件で比較すると、プノンペンカンボジア)やマニラ(フィリピン)の約2分の1、バンコク(タイ)の約4分の1、東京の約8分の1という低水準です。

現在、ホーチミンには約1万人の駐在員がいると言われていますが、都心部周辺の高層コンドミニアムの多くはベトナム人が自己使用しており、駐在員の賃貸需要に対する供給不足が顕著です。その結果、安価な不動産価格にも関わらず、高い家賃収入が得られるという状態です。表面期待利回り10%と、他のASEAN諸国の不動産市場と比較するとその高さは圧倒的です。

まだまだ割安な状態で手付かずとなっており、外国人投資家が参入していない今が、ベトナム不動産に投資する絶好のタイミングだといえるでしょう。

インターネットによる売り手と買い手のマッチングの可能性

日本でも不動産業界は多重構造、ブラックボックスと叫ばれて久しく、そこにインターネットを通じて情報をオープン化し、売り手と買い手を直接マッチングしようというベンチャー企業は多数生まれています。

それと同じ仕組みで、外国人によるベトナムの不動産物件購入をサポートするWEBサービスはチャンスがあるのではないでしょうか。 売り手と買い手のマッチングはもちろん、物件購入、強いては運用までをトータルでサポートするサービスなど良いでしょう。

今回の法改正限らず、ベトナムの不動産仲介にはまだまだ参入のチャンスがあります。 アパートやマンションの仲介サイトは存在しますが、物件数の少なさや物件の写真の欠如、おとり物件の多さなど、単純に日本ならばどの事業者もきちんとやっていそうなことが出来ていない事業者が多いのが現状です。当たり前のことを当たり前にやることが最大の競争力になり得るのです。

ちなみに、私どもはベトナムにて事業を立ち上げたい、特にインターネットベンチャーのサポートをしております。 会社登記やオフィス提供などはもちろん、運営する採用メディアでの採用支援、システム開発支援、現地のキーパーソンの紹介など多面的に展開しております。

何より、私どもがインターネットベンチャーですので、同じ事業者としての目線でサポートが可能です。サービスを提供するというよりは、一緒に立ち上げをサポートするといった方が合うかもしれません。

ご興味あればぜひご連絡くださいませ。

ベトナム初の祝い金型求人サイト『Viecoi』はアジアでの成功モデルとなれるか?

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ベトナム東南アジアでも屈指の成長率を誇る国家だ。

人口9,000万人、平均年齢28歳。1人当たりの所得も増え、以前はアウトソース先としての色が強かったが、今では多くの国々が拡大するベトナム消費市場を狙って参入を始めている。

その中には日本企業も多く、外務省のデータによると現在1,500拠点、年間100拠点以上が新たに参入。これは国・地域別ランキングで見ると世界8位に位置する。(1位は中国の3万2667拠点) これはつまり、ここベトナムにて多くの雇用機会が生まれることを指し、雇用機会を支える人材事業者にとっては追い風と言える。さらに、ベトナムの20代の転職率は日本の倍。終身雇用の崩壊が叫ばれつつも流動性の低い日本とは異なる労働観が存在するのだ。

そのような環境下において、既に多くの日系企業ベトナムに参入している。 大手の人材支援企業は軒並み支社を出し、エンジャパンに至っては現地No.1求人サイトであるベトナムワークスを買収している。これらの企業の多くは日系企業向けの採用支援事業を展開しているのが現状だ。これはある意味全うな判断で、それだけ需要があり、ビジネスを進めやすいからだ。これがベトナム市場における日系企業の現在の取り組みと言えるだろう。

では、これからベトナムで勝負をする日本人はどうあるべきなのだろうか。 一足先に経済成長を遂げた日本という国に生まれた日本人が、これからさらに成長を遂げていくベトナム経済に対して出来ることは何なのだろうか。 それは、ベトナム現地の企業に対して、更に言えば労働市場に対して新たな価値を提供していくことだ。

今回は、ベトナム初の祝い金型求人サイト『Viecoi』についてご紹介しつつ、これからの日本人のアジアにおける役割について考えていきたい。

ベトナム初の祝い金型求人サイト『Viecoi』とは

2015年末にサービスを開始した、ベトナム初の祝い金型求人メディア。初期費用完全無料、採用成果報酬額は1.0ヶ月分と従来の半額以下(通常2.6ヶ月分が多い)で提供。2010年よりベトナム進出支援やラボ開発を提供していた日本人や、日本での人材ビジネス立ち上げ経験豊富なメンバー、更には外資系企業のHR部門での勤務経験を持つベトナム人スタッフや、ベトナム国内の人材企業での営業経験のあるベトナム人がチームを形成。英語とベトナム語が飛び交うグローバルチームだ。

日本ではジョブセンス等で馴染みのある、祝い金というモデルが、ここベトナムにおいても通用するのかが肝だ。これにはオペレーション力が試されるため、日本人が勝負しやすい領域とも言えるだろう。

アジアで成功するロールモデルとなれるか

このサービス自体が成功するか否かに加え、もう1点注目すべきは、日本人がアジアで成功出来るのかという点だ。

日本発のサービスが海外展開する例は珍しくはない。しかし、完全に海外市場をターゲットとしたサービスが世界で成功する例はまだ少ない。米国で躍進を続ける福利厚生スタートアップのAnyperkはその先頭を走る例と言えるだろう。

成熟した日本国内市場において、新たな、そして大きなビジネスチャンスを見出し、スケールさせるのは簡単なことではない。 スタートアップ界隈には、『ビタミン剤ではなく、鎮痛剤を売れ!』という言葉がある。日本において、人々が大きな痛みを感じる領域を見つけ、ビジネス化するのは、技術革新か価値観の変化を捉えない限りは難しい。さらには、良質なビタミン剤ならまだしも、そもそも課題を捉え違い、自己満足のプロダクトが打ち上げ花火のように打ち上げられては散っていくのだ。

一方、アジア各国には大きな課題がゴロゴロ転がっている。現地でビジネスをしていると、正直転がりすぎていて目移りしてしまう自分を抑えることが大変なほどだ。つまり、解決すべき課題はそこにある。解決策も大枠は検討がついている。そこに対して情熱と、日本人が誇るべき勤勉性や品質へのこだわりを投下していけば、十分に勝負ができる。 もちろん、日本の成功事例を海外に持っていけば成功できるほど甘くはない。

実際に、クローンビジネスで有名なロケットインターネットですら、最近ベトナムで展開していたフードデリバリーサービス『foodpanda』の撤退を決めた。真似ることは私たちが想像する以上に困難を極めるのだ。

しかし、戦後あらゆる文化を吸収しながら独自の文化を築き上げた日本人だからこそ、この課題解決に適した民族なのかもしれない。 あらゆる課題を乗り越えて、Viecoiがベトナム人材市場のスタンダードになる日も近い。

【2015年版】ベトナムスタートアップのエコシステム

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ベトナムスタートアップシーンにおける2015年の投資社数は67を数えたという。

これは昨年の28件を大きく上回る勢いだ。その内25.8%はシードファイナンスで、銘柄は金融×IT、教育×ITが多数を占め、海外ファンドからの投資が多いようだ。最も大きなディールはiCare。こちらの記事でもご紹介した福利厚生の仕組みを活用したリテイラーだ。

vietnam-startup.hatenablog.com

 

昨年夏には日本のトランスコスモスベトナム最大の共同購入サイト『HOTDEAL.vn』に出資。月間ユニークユーザー約310万人、会員約250万人を持つ、レストラン等を対象とした共同購入サイトだ。トランスコスモスはホットディールを通じ、自社の顧客の商品、サービスをベトナムの消費者に販売する目的のようだ。


今後はこのような日本の事業会社による出資案件も増えてくるだろう。

Photo credit: Topica Founder Institute

ベトナムスタートアップが仕掛ける定期購入型モデルという新たな波

米国や日本などを中心に人気を集める定期購入型モデルのサービス。

化粧品のIpsyやBirchbox、ゲーマー向けのLoot Crate等、あらゆるジャンルにおいて受け入れられているビジネスモデルだ。

ここベトナムでもこの領域に対して多くのチャレンジがされてきた。しかし、一般消費者のクレジットカード普及率や物流問題など、このビジネスを成立させるには前提となる環境という壁が存在していた。
ベトナムでは長らく現金がほぼ唯一の決済手段であった経緯があり、銀行が定めるクレジットカード審査は厳しいようで、全体のカード普及率はまだ低い。感覚的には1割程度で、結果利用者は銀行審査に通ることのできる都市部の富裕層や中間所得層に偏っている。

しかし、いよいよベトナムでも経済成長と国民の所得水準の向上により中間所得層が年々拡大し、本格的にクレジットカード市場の成長が期待される段階に入ってきた。実際に近年、日系の進出が相次いでいる。

そんな中、昨年定期購入型モデルを用いた3つのスタートアップが立ち上がり、このビジネスモデルの先駆者として期待が寄せられている。

Jouet Box

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2015年11月にハノイでリリースされたのが、幼児向けの玩具の定期購入サービスである「Jouet Box」。

CEOはフランスでツアーリズムを学んだNguyen氏。ちなみにJouetとはフランス語で玩具という意味だそうだ。彼女がフランス留学中に感じた、ヨーロッパとベトナムにおける幼児期の教育の差に着目しこのサービスを開発。

元々夫とともにベトナムに帰国した際に、幼児教育向けのスクールの立ち上げを検討していたが、初期投資があまりにも高く断念。それでもこの問題に情熱を持っていた彼女がたどり着いたのが定期購入型のEコマースだったのだ。
Jouet Boxが目指すのは、子供達がJouet Boxの玩具を通じてクリエイティブな感性を養うこと。

ベトナムの一般的消費における教育費の割合はの6.8%。これは日本の2.3%を約3倍も上回る数字であり、教育熱心さが伺える。人口グラフをみてもまだまだ日本のような少子高齢化状態とは異なり、人口増加の途中にある。拡大するマーケットにおいて、Jouet Boxがフィットするのかを今後も追っていきたい。

Jouet Box

Ma Belle Box

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Ma Belle Boxは2015年6月にホーチミンでリリースされた、美容の定期購入型Eコマース。フランスとイギリスで学んだMarion Vigot氏が立ち上げたサービスだ。起業前はフランスとベトナムで企業のデジタルマーケティング支援をしていた彼女の心の中には、常に”美容”への情熱がデジタルマーケティングとリンクしていたそうだ。

ベトナムでは美容製品の偽物も出回り、ベトナム人女性もベトナム製のものは品質が悪く、日本製や韓国製のものを欲しがるそうだ。Ma Belle Boxは美容市場の拡大、そして消費者が安易に安価な美容製品を使うことのリスクを伝えていくことをミッションにしている。

Ma Belle Box

2Guys1Box

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米国で学んだ2人のベトナム人、Nguyen Quang Thai氏とNguyen Dang Khoa氏がホーチミンで立ち上げたのが2Guys1Box。コンセプトである“getting a monthly present for yourself”の通り、毎月おすすめのファッションアイテムが料金プランごとに送られてくるという仕組みだ。趣味思考が多様化した日本においてはファッションリーダーのような信頼度のあるキュレーターが選んだ商品が届くなどは考えられそうだが、ベトナムにおいては成立しそうなモデルだ。

2Guys1Box

まとめ


定期購入型モデルは一般消費者の消費の仕方を変え、企業が製品を届けるまたはテストマーケティングの手段を変える。
今後は美容や玩具のみならず、あらゆる領域にて新たなサービスが生まれてくるだろう。
もちろんまだ確立した製品供給ルートにはなり得ていないが、いつの日か人口9000万人のもとに定期購入型モデルが馴染む日は近いだろう。