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ベトナムのスタートアップ界隈で気になったことを紹介していきます

3ヶ月間ベトナムで強い営業組織を作るために取り組んだ6つの施策

3ヶ月間ベトナムで強い営業組織を作るために取り組んだ6つの施策をまとめました。 まだまだ試行錯誤しながらなので偉そうなことは言えませんが、ベトナムに限らず東南アジア市場でビジネスを展開する際に参考になればと思います。

人ではなくシステムに投下する

日本で事業立ち上げ期は、一枚岩になるための人の管理が大切です。しかし、ベトナムでそれを求めるのは困難。価値観、言語の違いは拭いきれません。ではどうするのか。誰もが活躍できる"システムを管理する"という方針に変えることです。言い換えれば、指示命令がなくても回る組織システムを作ることです。そのためには、この組織がどこを目指すのか、どのような体験を顧客に届けたいのかという顧客体験(User experience)の定義は不可欠で、メンバーに伝え続けなければなりません。メンバーを単なる作業者としてみている管理者に欠けている視点です。

また、異なる第1言語間では10言って1わかる程度。日本人同士のように、伝える努力やスキルがなくても、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境ではありません。阿吽の呼吸なんてものは存在しません。これは「ハイコンテクスト文化」と「ローコンテクスト文化」の違いとも言えるでしょう。 人ではなくシステムに投下することで、転職率の高いベトナムにおいて、人が替わっても再現性のある組織ができ、結果的にメンバーに目がいくようになりました。

評価基準を変える

これまで通り日本のパターン認識で評価をしがちですが、実は自分の認識が間違っており、新しい評価軸に作り替える必要があることも。 例えば、ベトナム人で面接に来る人は基本的に愛想がありません。もちろん個人の性格の問題もありますが、日本と比べると少ないのが事実でしょう。日本のサービス業をみてみてください。アルバイトスタッフですらとても愛想がよく、愛想が悪い人は仕事が見つけづらい世の中です。

実際に、愛想の悪いベトナム人を面接している時に、初めの数十秒で不採用にしたくなることがありました。しかし、それは私のこれまでの評価パターンに当てはめて考えた結果であり、実は本来の価値を見落としている可能性があったのです。 これは面接に限った話ではなく、開発でも営業でも同じことが言え、多国籍チームを作る際には絶対的に必要な視点でしょう。

相手を想像するコミュニケーション

私たちの組織の使用言語は英語です。ベトナム語が話せないので、英語を話せるスタッフを採用しています。しかし、私の英語力は決して高いものではありません。ボビーオロゴンの日本語能力くらいです。しかし、チームを動かすのにフォーマルな英語なんて必要ありません。重要なのは、相手を想像するコミュニケーションなのです。そして、コミュニケーションの量を下げないことです。

仕事の大部分がチャットでのテキストコミュニケーションで完結もできます。しかし、あえてリアルに話すことも時には重要です。第一言語ではない言語での会話は、どうしてもストレスが伴います。すると、意識をしないと自然とコミュニケーション量は少なくなる方に引っ張られます。中途半端で恥ずかしい英語でも、ガンガンチームを動かす方が大切なのです。

品質とは何かを伝え続ける

オフショア開発などでもよく言われることですが、東南アジアのチームで仕事をする際に問題になりやすいのは品質に対する基準の違いです。例えばソフトウェア開発であれば、ベトナムならば「動けばいいじゃん」となります。日本の会社ならば炎上ものです。この品質に対する認識の違いを埋める作業が必要なのです。

その昔、太平洋戦争時には連合艦隊司令長官を務め、真珠湾攻撃を指揮した人物である山本五十六は「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」という言葉を残しました。品質を上げるためには、品質とは何なのかを定義すること、そして実際にやってみせることが重要です。そして、その植え付けた品質に対する意識を、他の業務においても再現性を持たせることです。

組織のフェーズによってマネジメントスタイルを変える

ベトナム人の特徴として、非常に真面目で勤勉なことが挙げられます。一方で、言われたことはきちんとこなすが、それ以上のことはしない傾向も。依頼した仕事に対して何か新しい提案が返ってくることは少ないのです。しかし、これは改善できる問題です。どのようなチームも、下記のステップを踏んで成長していくからです。

Phase1:受け身

Phase2:自発

Phase3:顧客視点

Phase4:多能工

Phase5:スピードアップ

初めは受け身型の組織から始まり、徐々に自発的になっていきます。つまり、組織のフェーズによってマネジメントスタイルを変える意識を持つべきなのです。そうでなければ、両者にとってストレスなだけなのです。

私たちのチームでは、やっと「受け身」から「自発」の組織に少しずつ変化してきたという状況です。 それまでに取り組んだのは、主に以下の2つです。

・あなたはどう思うのか?と聞き続ける

・理想のレベルを伝え続ける

まず一つ目ですが、とにかくメンバーの声を拾い続けることです。日本人社長がベトナム人スタッフをマネジメントする際によく見受けられるケースが、全て自分で決めて実行段階で下に落とすというスタイルです。ご自身が何でも出来てしまい、その方が早いために取る手段ですが、長期的にみると間違いです。たとえ聞いたところで良いアイデアが得られないとしても、メンバーを巻き込み、”自分ゴト"にすることが大切なのです。

しかし1点注意が必要です。それは、上手な質問の仕方をすることです。漠然としたオープン過ぎる質問では答えることは難しい。それはそのスタッフの能力もありますが、どちらかと言うと社長とメンバーと言うレイヤーの違いにより生まれる取得情報の差です。きちんと判断に必要な情報を日々伝えているのか、伝えていたとしても、それは100%伝わっているのかを振り返ってみましょう。

私たちの場合、「この問題に対して、いまAかBで迷っているのだけど、ベトナムではどちらが今の自分達にとって有効だと思う?」というような限定的な質問の仕方をしています。それにより、考えるべきポイントが整理され、より良いアウトプットが期待できるからです。

さらに言えば、口頭のみで伝えるのではなく、紙やホワイトボードに書きながら伝えます。これは相手を注意する際にも有効です。ベトナム人はどんなに自分が悪くとも自分への責任を回避する性格があり、口頭で注意をしても自己防衛に入り、口論になるだけです。紙に書きながら、なぜ改善すべきなのかを論理的に説明するのです。他の国と比べて個性やこだわりが薄く、冷静に論理的に説明をすれば良い関係性を保ったまま改善をしてくれるのです。

そして2つ目は、理想のレベルを伝え続けることです。例えばWebサービスを運営していれば、競合サイトや他業種のサービスが実装している機能やサービス内容の記事やURL共有し続けるのです。 それにより、プロダクトオーナーが求める理想の姿の認識が揃い、そこに到達するためにもっとこうすべきだというアイデアが生まれる組織になるのです。

リクルートの社訓にもありますが、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という理想的なチームに近づくことができます。

少ない情報での意思決定に耐える

正しい判断をするためには、2つのアプローチがあります。

1つは定量的な判断。サービスを運営し、一定量のデータが蓄積してくればそのデータをもとに判断が可能です。もう1つは定性的な判断。ベトナム市場への深い知見があれば、それなりに正しい判断ができる場合もあるでしょう。新規サービスの場合ユーザーは0ですから、定量的判断ができるまで時間がかかります。また、定性的判断ができるほどの知見も経験も私たちにはありませんでした。

ではどうするのか。とにかくユーザーや顧客にサービスをぶつけ、フィードバックを得ながら学習するしかないのです。例えば営業担当が企業に営業に行きフィードバックを受けてきます。しかしここはベトナム。なかなか濃度の高いフィードバックを吸い上げてくることができません。海外市場でマーケットニーズを掴むことは、国内よりも困難を極めます。ならば時間をかけて調査をするべきなのか。いや、私たちにはそんな時間はありません。モタモタしていると、キャッシュは尽き、競合は同じサービスを開始するでしょう。

このような環境下では、対外的にも対内的にも少ない情報の中で意思決定をしなければならないのです。意思決定には責任が伴います。不確定要素がある中での意思決定はストレスも伴います。それでも意思決定し、前に進むしかないのです。

終わりに

3ヶ月間ベトナムで強い営業組織を作るために取り組んだ6つの施策についてご紹介しました。 ベトナムに少しでも興味を持った方、ベトナム事業をしたい方がいらっしゃれば、お力になれることもあるかと思いますので、ぜひご連絡くださいませ。

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